根管治療後に咬むと痛い! ズキズキした症状の原因とは?痛みはいつまで続く?
根管治療は、多くの人にとって歯の保存を目的とした重要な治療法です。しかし、治療後に「咬むと痛い」「ズキズキ痛い」と感じることがあり、その痛みが続く場合には不安になることでしょう。本記事では、根管治療後の痛みの原因や対処法について、最新の研究を基に専門医が詳しく解説します。
内容
根管治療とは?
根管治療(エンドドンティック治療)は、歯の内部にある感染したまたは損傷した神経や組織を除去し、清掃・消毒した後に詰め物をして密封する治療法です。この治療によって、歯の保存が可能となり、抜歯を避けることができます。
根管治療後の痛みの原因
根管治療後の痛みには、いくつかの原因があります。以下にその主要な原因を挙げます。
1. 治療中の器具操作や消毒剤の刺激による炎症
治療中に使用される器具(リーマーやファイルと呼ばれる針のような道具)や消毒剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)が周囲の組織に刺激を与えることがあります。これが原因で一時的な炎症が生じ、痛みを感じることがあります。
2. 神経が一時的に過敏になり痛みを感じる
治療後、根管内の神経が過敏になることがあります。この過敏症状は一時的なもので、通常数日以内に治まりますが、その間に痛みを引き起こすことがあります。歯が過敏になる理由としては、治療中の刺激や炎症によるものが多いです
3. 根管内に細菌が残っていたり、神経の取り残しがあるため炎症が継続
根管治療中に細菌が十分に取り除かれない場合や腐った神経が取り残しされている場合に炎症が続くことがあります。この場合、炎症が治まらず痛みが持続することがあります。
4. ラバーダムを使用せずに治療したため、治療中に感染した
ラバーダム(ゴム製のシート)を使用せずに治療を行った場合、細菌が根管内に侵入するリスクが高まります。これが原因で再感染し、痛みを引き起こします。ラバーダムは、治療中の感染を防ぐために非常に重要ですが、ラバーダムを使用していない場合はラバーダムを使用した場合とくらべ術後の痛みが出やすいことが報告されています。
5. 仮蓋が悪く、細菌が侵入して再感染した
根管治療中に一時的に装着される仮蓋が不適切な場合、細菌が侵入し再感染する可能性があります。仮蓋による封鎖はしっかりしていないと、唾液に含まれる細菌が根管内に侵入することがあります
6. 神経損傷による痛み
根管治療中に神経が損傷を受けることがあります。これが原因で長引く痛みが生じることがあります。神経損傷は、治療中の器具の操作や薬剤、感染によって引き起こされることがあります。
7. 既存の根尖性歯周炎が急性化
既に存在していた根尖性歯周炎(根の先端にある炎症)が急性化し、強い痛みを引き起こすことがあります。これは、感染が根の先端に広がり、周囲の骨や歯茎に急性炎症を引き起こすためです。
治療後の痛みはいつまで続く?
根管治療後の痛みの持続期間には個人差がありますが、一般的な経過は以下の通りです。
●治療後1-2日以内に痛みの程度は大幅に低下し、7日以内にほとんどのケースで痛みがなくなる
治療後の最初の数日は痛みが強いことがありますが、1週間以内に多くの患者さんは痛みが軽減されます。1
●一般的に最も強い痛みは術後24時間以内に発生し、その後減少する
多くの患者さんは、治療後2-3日以内に痛みが大幅に軽減します。
●根管治療前に感じている痛みが強いほど、術後の痛みが強くなる可能性が高い
治療前の痛みが強い場合、術後の痛みも強くなる傾向があります。2
●処置前の不安感が術後の痛みに関連している可能性がある
治療に対する不安感が強い場合、術後の痛みが強く感じられることがあります。
不安感は痛みの知覚を増幅させることが知られています。リラックスする方法を取り入れたり、医師に質問をして不安を軽減することが大切です。
根管治療後の痛みに対する対処法
1. 鎮痛薬が効果的
ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、炎症を抑え、痛みを軽減するのに役立ちます。
2. 咬合調整
歯の噛み合わせを調整することで、咬合による痛みを軽減することができます。
根管治療後に長引く痛みについて
根管治療後に痛みが長期間続く場合もあります。
1. 6か月以上続く長引く痛み
持続的な痛みが根管治療後6か月以上続くことがあり、その頻度は約5.3%という報告があります。一部のケースでは、治療後1年以上にわたり痛みが続くこともあります。3
痛みを長期化させないためには、根管治療後の痛みの管理を厳密に行うことがとても重要です。
2. 持続する痛みの予後は悪く、長期的なフォローアップでは患者の約1/3が改善を報告し、10%から20%が著しい改善を報告しているが、約半数は痛みが同じか悪化している
長期的な痛みの予後は必ずしも良好ではなく、多くの患者が痛みが持続するか、悪化することもあります。
3. 非歯原性の痛みの可能性(筋骨格系や神経障害性の痛み)
歯とは無関係な筋骨格系や神経障害性の痛みが原因である場合もあります。
4. 非歯原性痛の場合、再度の根管治療や外科的歯内療法では解決できないため、痛みの原因を正確に特定することが重要
非歯原性の痛みの場合、根管治療や外科的処置では解決できないため、痛みの正確な原因を特定することが重要です。4
最後に
根管治療後の痛みは多くの場合一時的なものであり、適切な対処法を取ることで軽減できます。しかし、痛みが長期間続く場合は、かかりつけ医に相談することが大切です。必要に応じて専門医を紹介してもらうことも重要です。痛みの原因を正確に特定し、適切な治療を受けることで、根管治療後の快適な生活を取り戻すことができます。また、治療後のフォローアップを怠らず、疑問や不安があればすぐに相談することが重要です。これにより、根管治療後の歯の健康を維持し、長期的な歯の保存を実現することができます。
ご自身の健康を守るために、定期的な歯科検診や適切な口腔ケアを行い、何か問題があれば早めに歯科医に相談するようにしましょう。歯の健康を保つことで、より快適な生活を送ることができます。
参考文献
1. Pak JG, White SN. Pain Prevalence and Severity before, during, and after Root Canal Treatment: A Systematic Review. J Endod 2011;37:429–38.
2. Torabinejad M, Cymerman JJ, Frankson M, Lemon RR, Maggio JD, Schilder H. Effectiveness of various medications on postoperative pain following complete instrumentation. J Endod 1994;20:345–54.
3. Nixdorf DR, Moana-Filho EJ, Law AS, McGuire LA, Hodges JS, John MT. Frequency of Persistent Tooth Pain after Root Canal Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Endod 2010;36:224–30.
4. Rafael B, Sorin T, Eli E. Painful Traumatic Trigeminal Neuropathy. Oral Maxillofac Surg Clin North Am 2016;28:371–80.