根管治療はどれくらい成功するのか?
根管治療はどれくらい成功するのか?
①根管治療の成功とは?
根管治療の成功とは、根の先に炎症が生じないように予防すること、もしくは根の先に炎症が生じてしまった場合にそれを治癒させることです。
<根管治療の成功例>
神経を取る治療(抜髄)を依頼された症例です
歯の中の内容物、特に細菌の除去を徹底的に行います
根の先に炎症を示す黒い影も出現することなく良好な経過を辿っています
<根管治療の失敗例>
過去に根管治療が行われている歯ですが、根の先に炎症を示す黒い影が見えます。根の中に細菌感染が広がり根の先に炎症を起こしています。
このように根の先に黒い影が見られない場合は成功、黒い影が出現した場合は経過不良と判断されます。
根の先の炎症が強くなると、膿が貯まり写真のように歯肉にニキビのような腫れが出ることがあります。
根管治療は歯の根の中に侵入した細菌をできる限り取り除き、根の先に炎症を起こさせないようにする治療です。
残念ながら医療行為である以上すべての症例が100%上手くいくわけではありません。
では、一般的にどのくらいの成功が見込めるのでしょうか?
②根の先に炎症が起きている頻度と根管治療の成功率
それでは日本で行われた根管治療がどれくらいの頻度で失敗し根の先に炎症が起きているのでしょうか。
一つの論文では(参考文献1)では、根管治療が施された歯ではきわめて高率(半数以上が経過不良)に根の先に炎症が発現していることが見いだされたと報告しています。
日本では根管治療後の経過不良例が高頻度で見られることは多くの歯科医師が実感している事だと思います。ただしこの報告はあくまで横断的調査の結果ですので、このなかには治ってきている途中にあるものや歯根破折の症例なども含まれている可能性があります。つまり正しく日本の根管治療の成功率を表しているわけではありません。
それでは根管治療が実際どの程度成功するのでしょうか?
残念ながら日本の保険治療における成功率についてはデータがないので、海外(欧米)の報告を参照したいと思います。
de Chevignyらの前向き研究においては、抜髄(神経を取る治療)では90%前後、感染根管治療(神経が壊死して根の先に炎症が起きた場合の治療)では80%前後の高い成功率が示されています。 (参考文献2)
上記以外の多くの欧米における研究においても、おおよそ似たような成功率が示されています。
つまり欧米諸国では、根管治療の施した歯の根の先に炎症が起きることは少ないことが見て取れます。
じつは原理原則さえきちんと遵守すれば、根管治療はとても成績の良い優れた治療法なのです。※1
日本と海外では保険制度や医療環境の違いなどで単純な比較はできませんが、少なくとも我が国の根管治療の現状は決して世界に誇れる状況ではないようです。
当院では欧米の根管治療専門医が行っている術式や考え方を学び実践しています。
根管治療によって救われる歯は沢山あります。
とくにはじめて歯の神経を取る場合は正しく治療を行えば高い成功率が期待できます。
根管治療は最初の治療が大変重要です。
※1 初めて行う根管治療の成功率です。一度根管治療を施した歯の経過不良例を再治療する場合は成功率は明らかに下がります。このことはまた別の機会で触れていきたいと思います。
(参考文献1)須田 英明, わが国における歯内療法の現状と課題, 日本歯内療法学会雑誌, 2011, 32 巻, 1 号, p. 1-10
(参考文献2)de Chevigny C, Dao TT, Basrani BR, Marquis V, Farzaneh M, Abitbol S, Friedman S. Treatment outcome in endodontics: the Toronto study–phase 4: initial treatment. J Endod. 2008 Mar;34(3):258-63.